Voice to Make the World More Inclusive Place | 大統領にも臆することなく立ち向かうアスリート

Photo from Flickr

2020年も気付けば11月。今年も残すところ2ヶ月ですね。5月にこのCSVを再開してからもう半年。更新頻度が落ちてしまっていますが、年内にも出来るだけ書いていこうと思っています。

そして、本日2020年11月3日。いよいよ世界中が注目する米国大統領選挙の日となりました。欧米ではコロナウイルスの感染拡大が進み、再びロックダウンを余儀なくされる国・地域も増えています。そんな混沌とする世界情勢の中、前回の投稿でテーマに挙げた「インクルーシブな社会」を考える上で注目すべきニュースが週末目に飛び込んできました。分断に揺れる米国の大統領選が注目される今、スポーツを通して、多様性や人権を考えることは重要だと考えています。

米国におけるLGBTの権利とその象徴でもある米国女子スポーツ界のスター選手同士の婚約

昨年FIFA女子W杯で優勝した米国代表チームキャプテンを務め、その祝賀式典での印象的なスピーチで話題をさらったMegan Rapinoe。そしてアテネ、北京、ロンドン、リオとオリンピック4大会連続で金メダルを獲得したWNBAのスタープレイヤーSue Bird。先週末、飛び込んできたのは、この2人の有名米国人女性アスリートが婚約と言うニュースでした。

2人は2017年に交際を公表して以来、LGBT(Lesbian, Gay, Bisexual, Transgender | 最近はここにQuestioningを加えてLGBTQとも呼ばれる)のアイコニックな存在として、様々な媒体で、トップアスリート同士のカップルがいかにお互いをサポートし高め合うパートナーであるかと言うことを語ってきました。そして、LGBTへの偏見や差別に対する主張を訴え続けています。こうした影響力のあるアスリート同士の同性カップルは、過去にもあまり聞いたことはなく、今回の婚約発表はとてもインパクトのあるニュースですね。

米国では2004年にマサチューセッツ州が州法で同性婚を認めて以来、各州での合法化が進みました。そして第2期オバマ政権の終盤となった2015年には遂に合衆国憲法の下の権利であるとされ、同性婚の禁止は違憲と認められています。言い換えれば全米で事実上同性婚が合法化されたということです。2019年の調査では全米で同性カップル世帯は98万にも上ったそうです。そういった背景からもリベラルでインクルーシブな印象を受ける米国でしたが、トランプ大統領は就任以降、性別の狭義化に動くなどトランスジェンダーに主なターゲットを絞り、LGBTの権利を剥奪するような政策を打ち出してきました。

大統領にも臆することなく立ち向かうMegan Rapinoeというアスリート

昨年FIFA女子W杯準々決勝フランス戦の前日、Megan Rapinoe選手の「I’m not going the f***ing White House(優勝してもホワイトハウスになんて絶対行かない)」という発言が公開されました。それに対してトランプ大統領が「Megan should WIN first before she TALKS!(勝ってからものを言え!)」とツイートしたと言う話は、皆さんも耳にしたことがあるかもしれません。(Trump tries to pick Twitter fight with soccer star Megan Rapinoe – mashable.com

彼女のこうした発言には賛否両論ありますが、大統領にも臆することなく自身の主義主張を貫く姿勢を支持する人も多いですね。そして、W杯優勝という結果を出したことで、大統領との舌戦にも勝利した彼女は、冒頭に挙げたあの有名なスピーチをすることになります。

ちなみにトランプ大統領とスポーツ界の衝突は、BLM(Black Lives Matter)に関する抗議活動のひとつとしてNFLやNBAの優勝チームによるホワイトハウス訪問ボイコットなど、多発している現実もあります。

米国女子サッカー代表チームによる男女の賃金格差に対する訴訟

2019年3月には、これは彼女のみではなく28名の女子代表チームの選手たちによる訴えですが、米国サッカー連盟(USSF:United States Soccer Federation)を相手に、男女の代表チーム賃金格差に対する訴訟を起こしています。昨年のW杯優勝祝賀式典はこの件に関する主張の場にもなりました。

男女の機会均等という社会的な文脈では肯定すべきである一方、そもそもの男女サッカーの国際的な市場規模で考えた際の経済的な価値にまだまだギャップがあるのも事実。また、USSFと男子代表、女子代表はそれぞれ労使交渉をしている事実がこちらのWashington Postの記事ではニュートラルな立場で分析されていました。そして、今年5月には連邦地裁によってこの訴訟は棄却されました。判決は「(労使交渉の中で)男子代表と同じ支払い方法の申し出を拒否していたことを理由に、賃金差別については証明できない」というもの。一方で「渡航や住居、医療サポートなどの面では性差別があったとする訴えについては、審理を続行」することが認められ、まだまだ彼女たちの戦いは続きそうです。

議論を呼ぶ社会活動家・Megan Rapinoeという存在

Photo from flickr by Lorie Shaull

マイノリティーの立場から社会に対して声をあげる姿勢が一定の支持を得ている一方で、彼女の主張は議論を呼ぶことも多々あります。先週末の婚約発表とほぼ同タイミングに、仏L’Equipe紙のインタビューで欧州サッカーのスーパースターであるLionel Messi選手やChristiano Ronaldo選手らに対して、もっと社会問題に対するアクションをすべきだと指摘していることが報じられました。

もちろん自身の主義主張を貫き、社会に対して訴え続けることは尊いことだと思いますが、より多くのファンを持つ彼らに対する、語弊を恐れずに言えば、価値観の押し付けとも取れる指摘には逆風も強そうです。ただ、そんな風当たりが来ることはわかっていて、より大きな影響力を持つアスリートだからこそ、彼女なりの期待感を込めて発言しているのでしょう。

本来は個人が尊重されて、平等に、自由に自分の人生を生きられる世界でなければいけないのに。世の中には数え切れないほどの問題がはびこっているけど、私にやれることはまだまだある。私の人生がただ単にフットボール選手として成功を収めることのためだけにあるなら、それはすごく退屈だし、くだらないと思う。そんな人生は送りたくない。名声や富を独り占めして、社会に還元しないなんてすごく身勝手だと思う。- Megan Rapinoe サッカーキング

米国ではやはり4大プロスポーツリーグやNCAA男子フットボールとバスケットボールの市場に比べればまだまだマイナーである女子サッカーの世界から、これだけ大きな影響力を持ったアスリートが出てくるというのも稀なことではないでしょうか。Megan Rapinoe選手は、自身が社会に対して行動を起こすべきイシューと信念を持った社会活動家でもあり特殊なケースではあります。また、必ずしも誰もができるアクションではありません。それでも、影響力のあるアスリートがそれぞれのバックグラウンドにあるイシューを見つけ、勇敢にアクションを起こしていくことは改めて尊いことだと感じています。

次回はスポーツと人権に関する別の事例に触れたいと思います。

Voice to Make the World More Inclusive Place | 大統領にも臆することなく立ち向かうアスリート」への1件のフィードバック

  1. ピンバック: BLM and Sports Community in Divided Nation | 分断する社会におけるBLMとスポーツ界 | Creating Sport Value·

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