本日4月6日は、国連が定めた「International Day of Sport for Development and Peace(開発と平和のためのスポーツ国際デー)」です。
スポーツ業界にいても、この記念日の存在を知っている人は、実はそれほど多くないのかもしれません。
この日は、国連が「スポーツには平和と開発を促進し、寛容と相互理解を育む力がある」という考えのもと、2013年に制定したものです。日付の由来は、1896年に近代オリンピックが初めて開催された4月6日。古代オリンピックにおける“休戦”の思想と、現代におけるスポーツの社会的役割を重ね合わせ、スポーツを「社会開発の手段」として位置づける象徴的な日でもあります。
2026年のテーマは、
「Sport: Building Bridges, Breaking Barriers(スポーツ:架け橋を築き、障壁を打ち破る)」。
分断が進む世界において、スポーツが持つ「人をつなぎ、包摂し、平和を育む力」を改めて問い直し、その可能性を信じていく。そんなメッセージが込められています。
日本が推進してきたスポーツ国際協力:SPORT FOR TOMORROW
では、日本がスポーツを通じた国際協力に長年取り組んできたことをご存知でしょうか?
その代表的な取り組みが、SPORT FOR TOMORROW(SFT)です。
東京2020大会のアクション&レガシーの中核のひとつとして位置づけられたこのプロジェクトは、日本が国際公約として掲げたものであり、2014年から2021年までの8年間で、204か国・地域、1300万人以上にスポーツの価値を届けてきました。
もちろん、日本のスポーツ国際協力はこれにとどまりません。たとえば、JICA海外協力隊は、1965年からスポーツを通じた国際協力を実践してきました。
現在は「POST SPORT FOR TOMORROW(PSFT)」フェーズとして、SFTコンソーシアムのもと、政府・民間・NGOなど多様なステークホルダーが連携しながら、持続的な取り組みが進められています。
このような文脈で語られる「Sport for Development and Peace(SDP)」の領域では、スポーツは目的ではなく、あくまで社会課題にアプローチするための「手段」です。では実際に、スポーツはどのように社会に作用しているのでしょうか。SFTに関連する事例から、その具体像を見ていきます。
キベラスラムで育まれた健全なコミュニティ:A-GOAL
ケニアをはじめとするアフリカ諸国では、コロナ禍によって多くの人々が職を失いました。そうした中、A-GOALは現地のスポーツクラブを拠点に、1万人以上への食料支援を実施しました。

その後も活動は続きます。舞台は、アフリカ最大級のスラムであるキベラ。
貧困や教育機会の不足に加え、非行やドラッグといった問題を抱える子どもたちに対し、「夢を追いかけられる環境をつくる」ことを目的に、年間を通じたユースサッカーリーグを運営しています。
2025年には2,300人以上が参加し、「スポーツ推薦による進学」、「アカデミーへのスカウト」、「年代別代表選出」といった成果も生まれています。
この取り組みが生み出している価値は、単なる競技機会ではありません。
- 居場所の創出
- 教育機会の拡張
- 非行防止
そして何より、子どもたちが社会に承認され、自尊心と自己効力感を獲得するプロセスにありますここでは、スポーツは「健全なコミュニティそのものを形成する基盤」として機能していると言えるでしょう。
地域資源としてのスポーツ:YASUR VOLCANO RUN
南太平洋の島国、バヌアツ共和国・タンナ島にある活火山「ヤスール山」。
この地で開催されるのが「Yasur Volcano Run」です。

このプロジェクトを立ち上げたのは、JICA海外協力隊として現地に派遣されていた糸見涼介さん。コロナ禍で停滞したスポーツ活動を再び動かすため、「地域に根ざした持続的な仕組み」を模索する中で、火山という観光資源とスポーツを掛け合わせました。
さらに、IOCの若手社会起業家支援プログラム(IOC Young Leaders)に採択され、資金とネットワークを獲得。プロジェクトは実現へと進みます。
この取り組みがユニークなのは、「チャリティ」に依存していない点です。
- 観光資源としての価値創出
- 地域経済の活性化
- 外部との接点の創出
スポーツを“産業”として組み込みながら、地域と世界を接続するエコシステムを生み出しています。ここでは、スポーツは「地域資源」として機能し、持続的な社会開発を支える役割を果たしています。
スポーツを通じた国際協力に共通するもの
SFTコンソーシアムには、2026年3月時点で約200の団体が参画しています。そして、世界を見渡せば、SDPに関わるプロジェクトは数えきれないほど存在します。
それらに共通しているのは、次の3点です。
- スポーツそのものが目的ではない
- 文脈によって役割が変わる
- 人を集める力が社会資源になる
スポーツは「競技」であると同時に、文脈によって意味を変える「メディア」にもなり得る。

4月6日という日は、「スポーツの力」を称賛する日ではなく、その力が「どの文脈で、どのように機能しているのか」を問い直す日なのかもしれません。SPORT FOR TOMORROWが生み出してきた実践の数々もまた、その問いに対する一つの答え。そしてその答えは、これからも世界各地で更新され続けていくはずです。


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