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新型コロナウイルスの影響で、世界の経済活動がストップしていたここ数ヶ月。3月22日が「世界水の日」、4月22日が「アースデー(地球の日)」、5月30日が「ごみゼロ(530)の日」と環境に由来する記念日も続いています。そして来る6月5日は「世界環境デー」。そして日本国内では6月が「環境月間」に定められています。
6月5日は国連が定めた世界環境デーです。6月5日は環境の日です。これは、1972年6月5日からストックホルムで開催された「国連人間環境会議」を記念して定められたものです。国連では、日本の提案を受けて6月5日を「世界環境デー」と定めており、日本では「環境基本法」(平成5年)が「環境の日」を定めています。 – 環境省
いまや社会は、新型コロナウイルスによるNew Normalでの生活に順応しなければならない社会ですが、アフターコロナの社会においても依然として地球の環境問題は残ります。コロナ云々以前に世界的にも大きな社会課題である地球温暖化が進めば、暑さなどの影響で、当然ながら屋外でのスポーツ活動をすることも難しくなる可能性がある。自らの活動の場を守って行くためにも、社会的影響力のあるスポーツ界もしっかりと地球環境のことを考え、アクションを起こしていく必要があるのではないでしょうか。
というわけで、前置きが長くなりましたが、環境について考えるには絶好の機会であるこの6月、「スポーツと環境」について考えていきたいと思います。
グレタの訴え
2019年9月23日、国連のClimate Action Summit 2019でのグレタ(Greta Thunberg)さんの有名な演説。「How dare you! (よくもそんなことを)」と感情のこもった訴えを繰り返す彼女のメッセージは世界中の大人たちに強烈なインパクトを残しました。今後10年間で地球の気温上昇を1.5度以内に抑えられる可能性は50%、 人間が対応できない非可逆的な連鎖反応を引き起こすリスクも同様だと指摘し、資本主義社会への警鐘を鳴らしています。当時16歳のグレタさんの訴えは、50年後、100年後を生きる彼女たちと更にその次の世代にどんな地球を渡すことが出来るか?という、大人たちへの問いかけです。
新型コロナウイルスの感染拡大が世界各国で広まっていた4月22日。この日は国連が定める地球の日(Earth Day)でした。様々なファクトも発表されるタイミングでしたが、Weather Channelによれば、新型コロナウイルス感染拡大の影響で人々の活動が抑えられたことで、皮肉にも一時的に地球環境は改善したとのこと。地球温暖化の要因となるCO2の排出のほか大気汚染物質など、やはり人間の活動と地球環境には大きく関わりがあることが明確に示されています。命を取るか、経済を取るか。公衆衛生でも地球環境でも、私たち人間が守らなければならないものは不変である気もします。
UNFCCCの「Sports for Climate Action Framework」
では、こうした気候変動に対してスポーツ界はどのような取り組みをしているのでしょうか。
2018年12月11日、国連の気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局が、パリ協定の目標達成に向け「スポーツを通じた気候変動に対する行動の枠組(Sports for Climate Action Framework)」を発表しました。この中で包括的な2つの目的を掲げています。1つは世界のスポーツ界がパリ協定で定められた気温上昇2℃以内というシナリオを達成するために必要なコミットメントを明確にすること。もう1つはスポーツの訴求力を通じてグローバル市民の気候変動に対する意識と行動を牽引すること。
Sports for Climate Action works towards two overarching goals:
1. Achieving a clear trajectory for the global sports community to combat climate change, through commitments and partnerships according to verified standards, including measuring, reducing, and reporting greenhouse gas emissions, in line with the well below 2 degree scenario enshrined in the Paris Agreement;
2. Using sports as a unifying tool to federate and create solidarity among global citizens for climate action.
この2つの目標を達成するため、国連はIOCともタッグを組み、この取り組みへの各競技の国際統括団体(IF)などの参加を促しています。この枠組が発表された2018年12月11日当初は、IOC、FIFA、東京2020組織委員会を含む17団体が署名していますが、そのうち7団体が下記の日本からの参加だったということを知って驚きました。ローカルな団体も多く、どのような経緯でこの枠組設置当初からの署名に至ったのか気になるところです。
■枠組発表時に名を連ねた日本の団体
- 株式会社AC福島ユナイテッド
- 鎌倉インターナショナルFC
- 京都大学アメリカンフットボール部
- 京都大学サッカー部
- 佐野高校ラグビー部
- 東北アイスホッケークラブ株式会社(フリーブレイズ)
- 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(東京2020組織委員会)
2020年5月31日現在では129のスポーツ組織・団体が署名しています。これから更に多くのスポーツ組織が参加していくことを期待しましょう。▶︎Sports for Climate Actionの参加組織・団体リスト
■Sports for Climate Action Frameworkに示された5つの原則
- Principle 1: Undertake systematic efforts to promote greater environmental responsibility | 環境に対する社会的責任の促進に関する体系的な取り組み;
- Principle 2: Reduce overall climate impact | 気候変動への負荷軽減;
- Principle 3: Educate for climate action | 気候に対する行動の教育;
- Principle 4: Promote sustainable and responsible consumption | 持続可能で責任ある消費行動の促進;
- Principle 5: Advocate for climate action through communication | コミュニケーションを通じた気候に対する行動の啓蒙
Sports for Climate Actionにはその枠組に示された上記5つの原則を理解し、賛同することで、参加することが出来ます。参加にご興味のある組織・団体の方はUNFCCCのSports for Climate Actionのページをご参照下さい。
地球環境と親和性の高いスポーツの取り組み
Sports for Climate Actionに参加しているスポーツ組織・団体ではどのような活動をしているのか、気になりますよね。多くの団体が様々な形で気候変動に対するアクションを起こしているわけですが、実際に自然を相手にする競技は地球温暖化など環境問題との親和性も高く、その訴求力も高いと感じます。取り上げたい活動は数多くありますが、今回は2つだけ触れておきたいと思います。
■World Sailingの「Sustainability Agenda 2030」
Sports for Climate Actionに参加しているIFの中でも、特にサステナビリティへの意識が高い競技団体として挙げられるのがWolrd Sailing(世界セーリング連盟)です。海、風、潮流と自然を相手にする競技であるセーリング競技を統括するWorld Sailingでは、2016年に「Sustainability Agenda 2030」という独自のガイドラインを設定。国連が定めるSustainable Development Goals (SDGs)はもちろん、IOCの取り組みともしっかり順応しています。SDGsで謳われるサステナビリティは、必ずしも地球環境に関することだけではありませんが、やはり自然を相手にする競技だけあって、海、水、環境への意識は特に高いと言えます。
A world in which millions more people fall in love with sailing; inspired by the unique relationship between sport, technology and the forces of nature, we all work to protect the waters of the world. – World Sailing
World Sailingではまた、地球を一周するヨットレース「The Ocean Race」とも共同でSustaibability Education Programmeを設立したり、使用済みの廃材であるセイルを加工してオシャレなバッグを作ったりと、サステナビリティに関する積極的な活動がとても目立つIFです。
■NHL Green Initiative
米国4大プロスポーツリーグでも地球温暖化という社会課題に対して最も深くコミットしているのはNHLでしょう。NHLは、2010年にNHL Green Initiativeというプログラムをローンチし、2014年にはサステナビリティレポート初版をリリース。2018年にアップデートされています。
氷上のスポーツであるという特性から、このまま地球温暖化が進めばアイスホッケーが出来るリンクが失われていってしまうというメッセージを訴求し、数多くのパートナー企業と共にこの社会課題に対して取り組んでいます。NHL Greenについては、以前から注目していたイニシアチブなのでまた改めて深堀したいと思います。
ということで、長文になりましたが今日はここまで。「環境月間」ということで、引き続き「スポーツと環境」について考えて行きたいと思います!
【告知】世界環境デーの前日6/4(木)Venture Cafe Tokyoにて、今回ご紹介したUNFCCC Sport for Climate ActionやNBAなど世界のスポーツ×社会貢献活動に詳しい梶川三枝さん、スポGOMIの生みの親・馬見塚健一さんとご一緒し、「スポーツが地球に出来ること」を考えるオンライントークセッションを行う予定です。登録無料ですので、ご興味ある方は是非。