Vision & Leadership | バスケ新リーグ構想とFC今治

温め過ぎてだいぶ間が空いてしまいましたが、ここ1ヶ月ほどで『ビジョン』と『リーダーシップ』の重要性を感じた2つの事例。バスケ新リーグ構想とFC今治に思うこと。

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NBLとbjという2つのリーグの対立構造を含めたガバナンスの問題から、国際大会出場停止という処分を受けている日本バスケットボール界。なかなか議論が前に進まない膠着状態でしたが、川淵三郎氏がタスクフォースのチェアマンに就任したことから打開の糸口が見えつつあります。

川淵氏と言えばやっぱりJリーグの生みの親という印象が強いですよね。先週2015年シーズンが開幕したJリーグは23年目。1993年のリーグ開幕までには多くの葛藤があったそうですが、川淵氏は ①サッカーの技術向上と普及促進 ②豊かなスポーツ文化の振興と国民の心身の健全な発展への寄与 ③国際交流親善 という3つの理念を持ってJリーグ設立させたそうです。そして、この理念の先にあるのが『スポーツを通した幸せな国づくり』をするという『百年構想』というビジョンな訳です。川淵氏が現役時代にドイツで見た老若男女が気軽にスポーツに触れることが出来る環境、そしてスポーツが豊かな社会に寄与している姿が川淵氏が思い描いたビジョン。先日23年目のシーズンが開幕し、百年構想の4分の1ほどが過ぎて、Jリーグはどこまでそのビジョンに近づいて来たのか。Jリーグ/JFAの取り組みについては、今後またこのブログでも取り上げて行きたいと思います。

思いをかたちにするためには、理念がないと前に進まないし、誰もついてきてくれない。そして、何が何でも継続させるという固い意志が大切なんですよ。
MY BEST LIFE 挑戦する生き方

で、話題を戻しますが、その川淵氏が今回バスケのタスクフォースのチェアマンに就任し、メディアにも取り上げられるようオープンな形でヒアリングを行っていますね。マスコミを巧みに活用して世論を動かして行く川淵氏の広報手腕には仕事柄やっぱり注目してしまう訳ですが、中でもスポーツナビさんはヒアリング内容を全文書き起こししているので、実際何が起こっているのかが包み隠さず伝わって来ます。このバスケ新リーグ構想で川淵チェアマンが掲げるコミットメントの中で特に注目を浴びているのが『5,000人アリーナ』。賛否両論あり障壁は高そうですが、やってみたいと思う行政も実際に出て来ているそうです。チームとのやり取りの中で、地方の小都市チームが5,000人のアリーナを作っても、、、としながらもやはり地域のアイデンティティとしてのチームとなっていきたいという意識も感じられる一幕がありました。そんなやり取りを読んでいると米国・NFLのグリーンベイ・パッカーズのことがふと頭をよぎりました。

グリーンベイ・パッカーズの本拠地グリーンベイは人口たった10万人ほどの小都市ですが、チームはNFL最多13回の優勝を誇る人気チームで、NFL唯一取締役会を持つ公有企業なんだとか。8万人を収容する本拠地ランボー・フィールドは試合時はファンで埋め尽くされます。人口10万人に対して8万人のスタジアムが埋まるのも驚きですが、更に8万人ほどがシーズンチケットの順番待ちをしているそうです。これはスーパーボウルの視聴者数が1億人を超えるというNFLの高いリーグ価値があってこそですが、グリーンベイまでウィスコンシン州の根強いファンが観戦に来ることもあり、NFLのようなマーケットが出来れば、グリーンベイのような小都市のチームでも8万人のスタジアムに溢れるくらいの人が集まるのです。これを最初から無理だと諦めるか、それとも可能性はあると考えるか。同規模とは行かないまでも5,000人のアリーナを埋めることなら出来そうな気もしますよね。ただ、そこには『理念』や『ビジョン』が不可欠です。

さて、先月末、愛媛県今治市で『リスタートカンファレンス』と題した記者会見が行われました。登壇したのは元サッカー日本代表監督の岡田武史氏。四国リーグに所属するFC今治のオーナーとなった同氏は、この記者会見の中で自身の想い描く日本サッカーの型とスポーツを通した地域社会活性策、更には地方の小都市が日本社会に変革を起こし、世界に対して発信して行くという大きなビジョンを語りました。

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FC今治から、希望を実現する『型』をつくりだしていきます。その『型』とは、戦略としての方法論でありながらも、最終的には個が持つ可能性を拡げるものです。 Number Web

現在5部社会人リーグの地方クラブに対して、名立たる企業や専門家の支援がこの記者会見で発表されました。もちろん岡田氏が舵取り役を務めるということへの大きな期待感とビジネス上のメリットもあるとは思いますが、岡田氏の掲げるビジョンには可能性とロマンを感じずにはいられません。小さなマーケットでも想いがあれば人は集まり、実現出来る。当然、岡田氏のように影響力のある人がメッセージを伝え、強烈なリーダーシップをとることが重要にはなりますが、「想いを共有すること」の大切さを改めて感じさせられます。そしてFC今治がスポーツの力をもって地域社会から変革を起こし、スポーツの価値を高めてくれるのではないかと期待しながら見守って行きたいですね。

というわけで『ビジョン』を描くことと、それを絶対に実現するんだという強烈な『リーダーシップ』を感じる2つの事例でした。『ビジョン』を描くだけでは机上の空論になってしまうし、『リーダーシップ』がなければそれは間違いなく実現しない。スポーツを通して社会的価値を創出しようとする2人のリーダーからはやっぱり学ぶべきことがたくさんあります。

最後に、川淵氏の構想には賛否両論ありますが、それくらいのことが出来なければプロとしてやる意味がないというスタンスです。これは否定的なことではなくて、バスケにはそれだけのポテンシャルがあるという自信と期待の現れだと思います。競技者登録数は野球、サッカーに次ぐ62万人を誇る日本バスケ界の今後にも期待大です。

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